『魔女の宅急便』(まじょのたっきゅうびん)とは角野栄子による児童書(児童文学)である。宮崎駿監督によって1989年に同じ題名で映画が公開された。なお、映画については「魔女の宅急便 (スタジオジブリ作品)」で記述する。
概要
角野栄子『魔女の宅急便』シリーズの1作目。主人公のキキが親元を離れ、知らない町で魔女として一人立ちする姿を描く。オリジナルは1982年から1983年にかけて「母の友」に連載。その後シリーズ化されており、福音館書店から刊行されている。表紙画、挿画は第1巻が林明子、第2巻が広野多可子、第3 - 6巻は佐竹美保がそれぞれ手がけた。英語、イタリア語、中国語、スウェーデン語版も出版されている。2009年10月、最終巻「魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち」が刊行され、24年に亘って描かれた同シリーズは完結した[1]。
- 魔女の宅急便
- 1985年1月25日初版発行。ISBN 4-8340-0119-9。
- 魔女の宅急便その2 キキと新しい魔法
- 1993年6月30日初版発行。ISBN 4-8340-1174-7。
- 魔女の宅急便その3 キキともうひとりの魔女
- 2000年10月20日初版発行。ISBN 4-8340-1704-4。
- 魔女の宅急便その4 キキの恋
- 2004年3月10日初版発行。ISBN 4-8340-0586-0。
- 魔女の宅急便その5 魔法の止まり木
- 2007年5月20日初版発行。ISBN 978-4-8340-2263-6。
- 魔女の宅急便その6 それぞれの旅立ち
- 2009年10月7日初版発行。ISBN 978-4-8340-2466-1。
角野は映画化に際し、当初は唯一の注文として「キキが旅立つ時にキキの故郷の木に付けられていた鈴を鳴らすこと」のみを求めていた。その後制作が進むに連れ内容が大きく変わることに否定的になったが、宮崎と角野が数回対談し解決した。[2]
タイトルが「ヤマト運輸の商標権に触れて問題になった」と一部で話題になった。その原因は原作者の角野栄子が第1作刊行時に宅急便はヤマト運輸の登録商標である事を知らなかったためである。映画化に至って、このアニメをそのままヤマト運輸のCMにした物も作られている。なお同映画をもとにした登録商標をスタジオジブリが取得している。
主な登場人物
- キキ
- 魔女と普通の人間の間に生まれた少女。10歳を過ぎた頃に魔女として生きることを決意したため、しきたりに則って13歳のある満月の夜、魔女の住んでいない町で独り立ちすべく相棒のジジと共に旅立った。最初に着いたコリコの町で人々の魔女に対する反応が冷たいことに戸惑うが、ふとしたきっかけから定住を決め、その後「魔女の宅急便」を開業。様々な出来事を経験しながら魔女として、1人の少女として成長していく。
- ジジ
- キキの相棒の黒猫。キキと同じ時期に生まれた[3]。キキの魔法で会話しているが、キキ以外の人間とは会話できない。キキの魔法力が弱まると会話ができなくなる[4]。
- オキノ
- キキの父親。普通の人間で、民俗学者。妖精や魔女の伝説や民話について研究している。
- コキリ
- キキの母親。古い血筋の魔女。ほうきに乗って空を飛ぶことの他に「くしゃみの薬」[5]を作る魔法を受け継いでいる。
- オソノ
- グーチョキパン店のおかみさん。コリコの町に着いたばかりで泊まる所もなく、1人途方に暮れていたキキをパン屋に居候させる。
- とんぼ
- 飛行クラブに所属するメガネの少年。飛行クラブはじゅうたんや箒など非科学的な物で飛ぶ方法を研究している。キキより1歳年上で、「とんぼさん」と呼ばれている。また、これら研究が失敗に終わったため[6]、15歳の夏に科学的なハンググライダー飛行を行ったのを最後に、物理学から生物学に転向し、17歳の秋から21歳の春までの3年半、コリコの西のナルナの技術学校(技術学校と銘打っているが、実際は大学の理学部に近い)[7]で生物学を専攻し、卒業後はコリコに戻り中学校の生物教師となる。
また、これらを含む登場人物の名前の多くは、「同じ音を2回続ける」(キキ・ジジなど)•「日本語の一般名詞」(とんぼさん・モリさんなど)といった命名法を用いているが、一部の登場人物名は、現実世界において個人名に用いられているものもある。[8]
映画(スタジオジブリ作品)
映画版(スタジオジブリ作品)についてはこちらのページをご覧下さい。
映画(実写版)
映画(実写版)についてはこちらのページをご覧下さい。
ミュージカル
横内謙介脚本、蜷川幸雄演出、宇崎竜童音楽によるミュージカル作品が上演された。
- 1993年:キキ役は工藤夕貴、トンボ役は赤坂晃。トンボ役は森且行で年内続演された。
- 1995年:キキ役を小高恵美、入絵加奈子、トンボ役は遠藤直人、坂本昌行のダブルキャストで再演。
- 1996年:キキ役は持田真樹、トンボ役は坂本昌行、長野博、原知宏で再々演がなされている。
脚注
- ↑ 角野栄子ホームページ 魔女の宅急便コーナー
- ↑ 叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年
- ↑ 第1巻10 - 11頁参照。なおキキの誕生日は2月2日であることが第5巻249頁で明らかになっている。
- ↑ 第5巻第6-8章で実際に発生している。
- ↑ 化学的に考えると、くしゃみを誘発するジフェニルクロロアルシン•ジフェニルシアンアルシンなどのいわゆる「くしゃみガス」の解毒剤と考えてもよい。
- ↑ 第1巻114頁でキキがとんぼさんにこれら研究が絶対に成功しないことを裏付けるセリフを残している。
- ↑ 第3巻313頁に進学先が、第4巻25・183頁に都市名とコリコからの方角が記載されている。
- ↑ 該当するものは、オキノ・モリ・フクオ・サキ(日本語の姓又は名)・ヤン(オランダ語の人名)・オレ(スカンジナビア語の人名)などがある。
関連項目
- 角野栄子
- 魔女の宅急便 (スタジオジブリ作品) - 本作の映画版
- 宅急便